顕微鏡 第44巻▶第3号 2009
■特集:SPMによる半導体表面分析の最近の展開

走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)による半導体デバイスの評価

本田耕一郎a,長康雄b

a富士通研究所,基盤技術研究所
b東北大学電気通信研究所,誘電ナノデバイス研究分野

要旨:半導体デバイス中に蓄積された電荷を観察することはデバイスの動作原理や信頼性上の特性を理解する上で重要である.特にフラッシュメモリは注入電荷を利用してセルトランジスタの閾値電圧を変化させることでメモリ素子として動作させるため,電荷の蓄積位置を明らかにすることは重要である.したがって蓄積された電荷を直接観察する方法の開発が期待される.この電荷の可視化手段として,マイクロ波顕微鏡技術の一種である走査型非線形誘電率顕微鏡法(Scanning Nonlinear Dielectric Microscopy: SNDM)はきわめて有効な手段である.私たちはSNDMにより,どのように固定電荷の電子とホールを検出することができるかを説明する.またSNDMを応用して,Metal-SiO2-SiN-SiO2-Semiconductors(MONOS)型メモリの蓄積電荷の存在位置,書き込み―消去を繰り返すいわゆるサイクリング後の電荷の分布に関して報告する.更に微細化デバイスに対応できる高分解能技術に関しても述べる.

キーワード:フラッシュメモリ,固定電荷,プローブ顕微鏡,SNDM

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