顕微鏡 第44巻▶第3号 2009
■講座

マイコプラズマ滑走運動の装置とメカニズム

宮田真人

a大阪市立大学・大学院理学研究科

要旨:病原性のバクテリアであるマイコプラズマは細胞の一方の極に膜突起を形成し,その部分で固形物表面にはりつき滑るように動く,滑走運動を行う.そのメカニズムはこれまでに調べられてきた生体運動とは根本的に異なる.最速種,Mycoplasma mobileを用いた一連の研究により,その装置と構成タンパク質,さらにはメカニズムが明らかになりつつある.滑走の装置は4つのタンパク質から構成され,細胞内部からくらげのような骨格構造に支えられている.ATPを加水分解することによって作られた動きが,細胞表面の“クランク”タンパク質をへて“あし”タンパク質に伝わる.あしはひも状の構造で,シアル酸を結合して決まった方向に引っぱることにより,細胞を前方向に進める.

キーワード:病原性バクテリア,巨大タンパク質,分子形状,動き伝達,細胞骨格

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