顕微鏡 第45巻▶第2号 2010
■オートファジー;形態学と分子生物学の融合

人工ビーズを用いてオートファジーを視る

小林昇平,原口徳子

(独)情報通信研究機構神戸研究所未来ICT研究センター

要旨:オートファジーが起こる瞬間を顕微鏡で捉えるのはかなり難しい.それが細胞内のいつどこで起こるか分からないからである.我々は,その問題を解決する方法として,細胞内に入れたプラスチックビーズを用いて,その周辺にオートファジーを誘導する方法を確立した.生きた細胞に導入したビーズを,蛍光顕微鏡を用いて経時的に観察することによって,オートファジーの開始から完了までのダイナミックな過程を追跡することが可能になった.蛍光観察した同じビーズを電子顕微鏡観察することで,オートファゴソーム形成に特徴的な膜構造を見分けることも可能である.本稿では,細胞内に導入した人工ビーズを用いてオートファジーを視る方法として,生細胞蛍光顕微鏡と電子顕微鏡法とを組み合わせたLive CLEM法を紹介すると共に,この方法を使って新たに分かってきたオートファジーの過程について解説する.

キーワード:蛍光顕微鏡法,電子顕微鏡法,live CLEM法,ポリスチレンビーズ,オートファジー

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