顕微鏡 第45巻▶第3号 2010
■解説

EBSD法による材料組織変化のIn-Situ観察

鈴木清一

株式会社TSLソリューションズ

要旨:EBSD法とIn-Situ試験装置を組み合わせ,SEM中で材料組織の動的変化を直接観察する技法に関して説明する.試料加熱装置では,EBSD検出器を保護するという観点から投入熱量を制限し,断熱方法を工夫しながら試料を加熱すること,さらに試料の赤熱による可視光および赤外線を遮断する工夫をすることで1173K程度の高温でも問題なくEBSD観察は可能となる.この加熱試験によるTi試料のα-β変態の観察例を示す.試料引張り装置を用いた変形過程のEBSD観察は,SEM中での装置の配置等を工夫することで可能である.試料引張り試験では変形位置を特定するうえで工夫が必要である.アルミニウム試料を用いた組織変化の観察例を示す.さらに試料を高温度で引張り変形させながら観察する場合の課題についても説明する.また試料曲げ装置との組み合わせでは,EBSD観察は比較的容易で有意なデータも得やすい.連続的に変化する微小な方位差と変形量の対応についても説明する.

キーワード:EBSD法,In-Situ観察,熱処理,引張り変形,曲げ変形

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