顕微鏡 第45巻▶第4号 2010
■最近の研究と技術

極低温電子顕微鏡による胃プロトンポンプの立体構造解析

阿部一啓

京都大学大学院・理学研究科・生物物理学教室

要旨:胃プロトンポンプ,H+,K+-ATPaseはpH 1という強酸性な環境を胃内腔に作り出す.このように極めて大きなH+の濃度勾配を生みだすメカニズムは,生化学上の重要な問題である.我々は極低温電子顕微鏡による電子線結晶学によってH+,K+-ATPaseの立体構造を明らかにした.ここでは得られた構造に基づき,胃酸分泌という生命現象に対する一つの分子モデルを紹介する.

キーワード:胃プロトンポンプ,H+,K+-ATPase,極低温電子顕微鏡,二次元結晶,膜タンパク質

本文PDF