顕微鏡 第46巻▶第1号 2011
■学会賞(瀬藤賞)受賞論文

電子顕微鏡法による固体の相変態現象に関する研究

村上恭和

東北大学多元物質科学研究所

要旨:固体の相変態は材料機能開発の宝庫であると共に,それ自体が基礎物性における興味の対象である.本稿では結晶構造の変調とスピン・電荷配列に強い相関があり,その配列具合によって材料学的な性質が大きく変化する二つの物質系―強磁性形状記憶合金と層状ペロブスカイト型Mn酸化物―に焦点をあてて,透過電子顕微鏡法による相変態と組織形成の研究を紹介する.前者に関しては材料設計で一般的に重要となる格子欠陥と磁化分布の関わりを,また後者については電場誘起のドメインスイッチング現象の機構に注目した研究を行った.強磁性や電荷・軌道整列など,それぞれの構造的秩序の外場応答(磁場や電場によるドメイン構造の変化)を電子顕微鏡内でその場観察するための工夫を行いながら,電子線ホログラフィー,ローレンツ顕微鏡法,弱い超格子反射を用いた暗視野像の観察などのイメージング技術を相補的に活用した.

キーワード:電子線ホログラフィー,ローレンツ顕微鏡法,その場観察,ドメイン構造,相転移

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