顕微鏡 第46巻▶第2号 2011
■解説

電子顕微鏡を用いた価電子(結合電子)状態分析技術の開発

寺内正己

東北大学多元物質科学研究所先端計測開発センター

要旨:電子顕微鏡用の軟X線分光器開発の開発経緯および現状に関し報告した.これまで開発してきた分光器が,基本で60–1200 eV,拡張タイプで60–2300 eVであったのに対し,現在開発中の分光器においては50–4000 eVの測定範囲を目指している.また,この装置による金属LiからのLi-K発光スペクトル測定にも成功した.また,以前作製した高分解能タイプの分光器で測定した六方晶BNから得たN-K発光スペクトルの異方性計測から,π結合軌道およびσ結合軌道からの発光強度分布(π結合軌道およびσ結合軌道の状態密度分布に比例する)を求め,バンド計算の結果とよい一致をしていることを確認した.

キーワード:軟X線発光分光法,価電子状態,電子顕微鏡

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