顕微鏡 第47巻▶第1号 2012
■特集:SPMのフロンティア~多様な材料系の研究ニーズに対応するSPM物性計測の最先端~

放射光励起走査トンネル顕微鏡による高分解能元素分析

江口豊明a,b,奥田太一,木下豊彦,長谷川幸雄

科学技術振興機構ERATO中嶋ナノクラスター集積制御プロジェクト
慶應義塾大学大学院理工学研究科
広島大学放射光科学研究センター
高輝度光科学研究センター(JASRI)
東京大学物性研究所

要旨:原子分解能を持ち,しかも化学組成を分析できる顕微鏡は究極の顕微鏡の一つといえる.エネルギー可変のシンクロトロン放射光(SR)による内殻励起を利用した走査トンネル顕微鏡(STM)は,そのような究極の顕微鏡の有力な候補となる可能性を秘めている.我々は,放射光により励起された内殻正孔が電子正孔対消滅を起こす際に生成される二次電子をSTM探針により検出し,その二次元分布を画像化することで,20nm以下の高分解能で表面の化学組成分析に成功している.現在,信号検出感度を向上させつつ,最先端の光源に対応すべくシステムの改良を進めている.本稿ではこれら改良点を紹介すると共に,今後の展望についても述べる.

キーワード:走査トンネル顕微鏡,シンクロトロン放射光,元素分析,X線吸収スペクトル

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