顕微鏡 第47巻▶第2号 2012
■特集:体内時計のかたち

中枢時計の時間を見る

瀬尾和志,岡村均

京都大学大学院薬学研究科医薬創成情報科学講座システムバイオロジー分野

要旨:視交叉上核(SCN)は概日リズムの中枢であり,この神経核のニューロンは睡眠覚醒リズムを規定する.我々は,マウスPer1遺伝子のプロモーター下流にホタル発光遺伝子を結合したPer1-lucトランスジェニックマウスを作成し,これより作成したSCNスライスを高感度CCD顕微鏡にて連続観察できる系を開発し,SCN細胞1つ1つの発光リズムを時空間解析することに成功した.この観察系を用いて,SCNで体内時計の朝に発現する抑制性Gタンパク質制御物質であるRGS16の機能を検索した結果,RGS16欠損マウスでは,リズムの起点を形成するSCNの背内側部の先頭集団細胞の時間位相が遅れ,マウス個体の活動リズムも遅延することが明らかとなった.このようなリアルタイムイメージング技術は,SCN,ひいては神経ネットワークがいかにして個体の行動パターンを規定するのかという脳の仕組みを理解するうえで重要なツールとなるだろう.

キーワード:視交叉上核,時計遺伝子,RGS16,概日リズム,リアルタイムイメージング

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