顕微鏡 第47巻▶第2号 2012
■解説

隕石中に閉じ込められた太陽系形成当時の化石を同位体顕微鏡で捜す

圦本尚義,坂本直哉

北海道大学大学院理学研究院自然史科学部門
北海道大学創成研究機構アイソトープイメージングラボ

要旨:太陽系の起源の研究法として宇宙物質を実験室で分析する方法がある.宇宙物質は微細な組織を持っているため顕微鏡法が非常に有効な手段である.また,宇宙においては物質間の同位体組成の違いが顕著である場合が多いため,同位体は物質の起源や進化のトレーサーとして有効である.同位体は質量分析法により測定されるが微細構造を持つ物質には適用が限られていた.最近,同位体顕微鏡という装置が開発され質量分析法と顕微鏡法が融合した.それにより,同位体をトレーサーとして微細組織の形成を可視化し,解析できるようになった.本稿では,同位体顕微鏡により初めて明らかになった太陽系最古の物質,恒星の残骸物質,分子雲の氷の化石の研究について解説する.

キーワード:イメージング,2次イオン質量分析法,同位体,隕石,太陽系

本文PDF