顕微鏡 第47巻▶第4号 2012
■発生過程における細胞移動のライブイメージング解析

定量的画像解析のための情報技術

小林徹也

東京大学生産技術研究所

要旨:イメージング技術の発展により,生命科学の様々な分野において画像や動画が実験の一次データとして得られるようになってきた.しかし多くの場合,画像の評価方法は「見る」という定性的かつ主観的な方法にとどまり,画像が有する定量的情報が最大限に活用できていない.また最近では,データ取得の簡便さから「見る」ことが不可能なほどの多量の画像も生成されている.画像解析に基づく定量的解析や自動的な情報の取捨選択は,今後の生命科学研究において不可欠であり,バイオイメージインフォマティクス分野として台頭しつつある.本総説では,バイオイメージインフォマティクスに関連する背景,基本情報などを豊富な参考文献とともに紹介する.また具体的な画像解析の問題として,核などの粒子オブジェクトの同定,膜などの境界領域の同定,そして分子発現の定量化に関わる画像解析例を紹介する.最後に,今後のこの分野の発展において解決すべき課題を議論する.

キーワード:バイオイメージインフォマティクス,画像解析,定量生物学,システム生物学

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