顕微鏡 第48巻▶第1号 2013
■スピン偏極電子技術

スピン偏極LEEM

越川孝範,鈴木雅彦,安江常夫,E. Bauer,中西彊,金秀光,竹田美和

大阪電気通信大学エレクトロニクス基礎研究所
Dept. of Physics and Astronomy, Arizona State Univ.
名古屋大学理学研究科
名古屋大学工学研究科
科学技術交流財団シンクロトロン光センター

要旨:低エネルギー電子顕微鏡(LEEM)・光電子顕微鏡(PEEM)は表面の現象を実時間かつ多機能で観察する表面電子顕微鏡として注目を集めている.ここではLEEMにスピン偏極電子ビームを照射することによる,磁区観察の機能向上のための開発ならびに得られた結果について最近の状況を報告する.スピン偏極電子ビームを用いた磁区コントラストは弱いために実時間観察を実現しようとすると,電子銃の高輝度化,高スピン偏極化,電子源(フォトカソード)の長寿命化を実現しなければならない.そのため,励起用レーザ光の背面入射による高輝度化とそれに伴う歪み超格子フォトカソードの開発および偏極度の向上,極高真空(XHV)の実現と電子光学系の新しいデザインによる長寿命化を達成した.また,開発したスピン偏極LEEM(SPLEEM)を用いてスピントロニクス薄膜材料として期待される[CoNi2]y多層膜の詳細な観察を行った.これらの一連の成果につき報告する.

キーワード:スピン偏極低エネルギー電子顕微鏡,動的観察,スピントロニクス,磁区観察,歪み超格子

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