顕微鏡 第48巻▶第2号 2013
■解説

イオン液体の液状導電付与剤としての電子顕微鏡観察への応用

桑畑進a,b

大阪大学大学院工学研究科
科学技術振興機構-CREST

要旨:常温でも液体状態であるイオン液体は,蒸気圧が極めて小さく真空下でも蒸発しない.これを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると帯電せずに観察できるという筆者の発見より,イオン液体を液状の導電付与剤に用いる提案を行っている.柔らかく複雑な表面構造を有する,あるいは乾燥すると変形する生体材料等への適用は非常に効果的であり,液状ゆえに微小な箇所まで液体が広がり,さらに試料中にも入り込むことによって,少量で帯電を完全に防ぐことが可能である.また透過型電子顕微鏡(TEM)観察の場合,TEMグリッドにイオン液体の液膜を作製し,その中に試料が存在させれば試料の形状を崩すことなく観察が可能となる.さらにイオン液体中で化学反応を行い,その反応を電子顕微鏡,あるいはEDXでin situ観察することができる.例えば金属の電解析出のその場観察や,電気化学反応に伴うイオン濃度の変化等を調査してきた.

キーワード:イオン液体,液状導電付与剤,その場観察,その場計測

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