顕微鏡 第49巻▶第1号 2014
■大気圧走査電子顕微鏡(ASEM)

巨核球による血小板産生と樹状細胞による細菌貪食の液中電顕観察

佐藤主税,渡邊要平,丸山雄介,佐藤真理,山本雅之,辻典子,本橋ほづみ

産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門
東北大学大学院医学系研究科医化学分野
東北大学加齢医学研究所加齢制御研究部門遺伝子発現制御分野

要旨:血液中の細胞成分の一つである血小板は,骨髄において巨核球から生産される.巨核球は多核細胞であり,成熟に伴い胞体突起を伸長する.その突起がちぎれることにより血小板が形成される.一方,樹状細胞は抗原提示細胞として機能する自然免疫細胞である.細菌などを食作用により細胞内にとりこみ,抗原情報をT細胞に提示すると共にサイトカインなどの様々な液性因子を産生して獲得免疫を誘導する.これら細胞の微小な内部器官とタンパク質複合体による機構には,未知の部分が多い.巨核球を,コーティングしたSiN薄膜上で初代培養し,前血小板中の接着因子P-selectinを免疫ラベルした.大気圧走査電子顕微鏡(ASEM)で水中観察したところ,前血小板はラベルされたα顆粒らしい構造を含み,周囲に微小管が張りめぐらされていた.また,細菌が樹状細胞に貪食され,細菌を取り込んだ食胞がF-actinに囲まれる様子をASEMで観察した.

キーワード:免疫電子顕微鏡,巨核球,血小板,樹状細胞,微小管

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