顕微鏡 第49巻▶第3号 2014
■連続スライスSEMによる医学・生物学研究の最前線

SBF-SEMによる生体内3次元微細構造観察の試料作製とその応用

大野伸彦a,b,齊藤成,齊藤百合花,大野伸一

山梨大学大学院医学工学総合研究部解剖学講座分子組織学教室
自然科学研究機構生理学研究所多次元共同脳科学推進センター

要旨:Serial block-face scanning electron microscopy(SBF-SEM)は,組み込み式ミクロトームによる表層切削とSEMによる試料の断面観察とを交互に反復することにより,数百μm2以上に及ぶ比較的広範囲の領域から,透過型電子顕微鏡による連続切片観察に類似した画像を,数nm程度の解像度で迅速に取得する新しい方法である.このSBF-SEMを用いる際は,観察時の試料のチャージングを低減すると同時に,観察像のコントラストを上げるために,試料調整過程におけるブロック電子染色が必要であり,また包埋やトリミング,観察条件などの最適化が重要である.SBF-SEMは神経組織のコネクトーム解析のみならず,様々な病態や遺伝子改変動物におけるオルガネラや細胞の形態を3次元的に解析する上で有用である.また分子標識法などと組み合わせることで,特定の分子を3次元組織構造中で同定できる.SBF-SEMは,従来の透過型電子顕微鏡観察では解析が困難であった生体内組織の3次元的微細構造についての情報を得る新たな手法として,今後広く用いられていくと考えられる.

キーワード:SBF-SEM,ダイヤモンドナイフ,ブロック染色,三次元再構築

本文PDF