顕微鏡 第50巻▶第2号 2015
■特集:単一菌体の時間的・空間的連続観察から得られた新知見と将来展望

ストラクトーム解析による結核菌の基礎的形態データとリボソーム定量

山田博之

公益財団法人結核予防会結核研究所 抗酸菌部

要旨:結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は,1882年にRobert Kochにより発見された細菌で,かつて世界で最も高い死亡率を記録した感染症,結核の原因菌である.幅約0.4 μm,長さ約4 μmのやや湾曲した普通の桿菌である.1分裂に要する時間が約20時間で,極めて増殖が遅いことが特徴である.これまで,急速凍結置換固定法を用いてより生きた状態に近い結核菌の透過電子顕微鏡像を観察してきたが,今回,細菌を対象としては世界で初めて超薄連続切片観察による「電子顕微鏡レベルにおける実測値に基づく細胞の定量的,三次元的全構造情報」,すなわちストラクトームの解析を試み,興味深いデータを得た.細胞質内のリボソーム密度を既に報告されている真菌のデータと比較するとともに,リボソームを標的とする抗結核薬の耐性機序について考察する.

キーワード:病原性細菌,結核菌,ストラクトーム解析,基礎形態情報,リボソーム密度

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