JSM日本顕微鏡学会

学会の概要

会長からの御挨拶

田中信夫

 みなさまこんにちは。平成27年度から会長を拝命している田中です。
 日本顕微鏡学会は昭和24年の設立以来、我が国の微細構造観察技術の開発研究とそのバイオ系および材料系への応用研究に大きな貢献をしてきたことは、皆さまもよくご存知のことと思います。ノーベル賞候補者としてもたびたび話題になる故外村博士や飯島博士も本学会の会員であります。
 平成15年には、学会が対象とする観察技術をさらに広げるために、透過電子顕微鏡(TEM)や走査電子顕微鏡(SEM) のみでなく、レーザー共焦点顕微鏡や走査プローブ顕微鏡(STM, AFM, MFM) などの研究も包含し、その成果を定例学会で発表したり欧文専門誌や和文啓蒙誌にもご投稿いただくことができるように、学会名を「日本顕微鏡学会」(Japanese Society of Microscopy; JSM)といたしました。
 本学会は、本年からは国際連合UNESCO組織の中に位置づけられた国際顕微鏡連合(International Federation of Societies for Microscopy; IFSM)の一員として国際的にも様々な活動を行っており、会員諸氏は多くの国際会議において発表や研究交流をしております。またアジア地区の活動も重視しており、Asia Pacific Microscopy Congress (APMC) への参加やアジア4カ国顕微鏡学会連合も組織してその中心メンバーとして活動しております。
 国内では、顕微鏡科学(nanoscopy) の最先端の研究発表ができる定例学会を春に開催し、秋には学会内で活動する16の研究部会と地方支部が一体となってシンポジウムを開催し,研究におけるトピックを広く会員とともに共有しようと努めております。
 本学会はまた、顕微鏡科学の研究・教育と広報をする公益法人として内閣府から認定されており、最先端の研究発表以外にも、中、高校生むけ講演会、大学院生や企業の専門職むけの講習会や技術セミナーおよび地方でのイメージングの体験学習などを開催して大変好評をえております。
 新聞などでその成果がしばしば報道されるように、我が国の顕微鏡科学は米国、ドイツ、英国とともに世界のトップレベルを維持しており、最近の話題としては、原子の直径の1/4まで観察できる収差補正高性能電子顕微鏡の開発、触媒反応や電池の電極反応がその場で原子レベルで観察できる環境顕微鏡の開発、生体高分子やインフルエンザウイルス1個の構造を決定するクライオ顕微鏡技術、筋肉力の発生機構を動的に観察する高速原子間力顕微鏡の研究、波長限界より小さい分解能をもつ共焦点レーザー顕微鏡、2つの光子の干渉をつかって生体分子の構造情報をえる2光子顕微鏡の研究などさまざまな研究が行われております。学会に入られることで、このような学問の進展が自ずから取得されることができると考えています。
 本学会は典型的な学際的な学会であります。物理、材料、化学、医学の研究者が一同に会していますし、使う探針(プローブ)としても、光波(電磁波)、電子(量子波)、イオン(粒子)、電流、原子間力など様々に拡がっており、得られる情報は生体組織や材料の微細構造情報に留まらず、材料物性の本質である内部エネルギー状態の計測や、結晶中の格子振動(フォノン)の分布状態までも研究できるような状態になっております。
 2000名を越える学会構成員は、大学関係者や国立研究所員のみならず、装置メーカー技術者、医学研究者、生物物理学者、化学者、鉱物学者などと多種多様であり、学会での交流会などは研究者にとってとても有意義で楽しい時間となっていることは他学会に見られない特徴であると考えています。
 みなさまがこのような恵まれた学会環境を存分に利用され、ご研究がさらなる進展をされることを期待して、ご挨拶とさせていただきたいと思います。

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