顕微鏡 第44巻▶第1号 2009
■特集:産業界での電子顕微鏡利用法と将来技術

印刷分野における材料・プロセスソリューションへの顕微鏡の役立ち

麻生真人a,黒田孝二b

a大日本印刷株式会社 ナノサイエンス研究センター
b大日本印刷株式会社 研究開発センター

要旨:印刷は溶解分散した分子状態から所期の構造,機能を発現させるプロセスである.20世紀の観察技術は原子,電子の構造と機能の解明を進め,半導体産業中心の発展を支えた.一方,印刷技術は15世紀のグーテンベルク以来の歴史を持ち,その対象を紙から包装,電子光学部材へと拡げてきたが,その現場には経験で材料を操るナノテクノロジーがひそんでいることが解き明かされてきている.21世紀のモノづくり技術の発展と次世代への継承には,プロセス中の材料がナノ構造からマクロ機能に発展する一連の挙動を俯瞰的に“見る”計測解析技術と“知る”ための多様な知識の蓄積と“操る”技能の一段の発展,および益々膨大化するデータの活用に,試料作製から観察,データ表現技術まで一貫したヒューマンインターフェイスを確保するシステムの体系化が緊要である.印刷分野ではナノ構造から何を読み解いて所期の機能体に仕上げるプロセス技術に反映するのかを論ずる.

キーワード:印刷技術,ナノテクノロジー,プロセス解析,材料挙動,ヒューマンインターフェイス

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