顕微鏡 第44巻▶第2号 2009
■解説

腎臓と唾液腺における細胞膜水チャネル,アクアポリン

松﨑利行a,高田邦昭b,小澤一史a

a日本医科大学大学院医学研究科生体制御形態科学分野
b群馬大学大学院医学系研究科生体構造学分野

要旨:アクアポリン(aquaporin, AQP)はおもに水チャネルとして機能する膜タンパク質で,哺乳類ではAQP0からAQP12の13種類が知られている.水の移動が盛んな器官にはこのうちいずれかのAQPの発現がみられることが多い.腎臓にはAQP1, AQP2, AQP3, AQP4, AQP6, AQP7,およびAQP11が発現し尿濃縮において重要な役割を担っている.なかでも集合管細胞のAQP2はバソプレッシンに反応して細胞内小胞から細胞膜へと移行し,水の再吸収を調節している.唾液腺には腺房細胞の頂部細胞膜にAQP5があり,唾液分泌に重要な役割を果たしている.水の分泌量の変化に伴うAQP5の細胞内分布の変化が示唆されていたが,組織化学的検討からは否定的である.一方で,分泌果粒の放出により細胞膜と果粒の膜が融合するとAQP5の分布にも変化が見られる.これはエキソサイトーシスとエンドサイトーシスの際の細胞膜の動態を理解するうえで興味深い.

キーワード:アクアポリン,水チャネル,腎臓,唾液腺,膜動態

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