顕微鏡 第44巻▶第3号 2009
■解説

分裂酵母のアクチン細胞骨格に関する微細構造学的解析

釜崎とも子a,高木智子b,c,馬渕一誠c,大隅正子d,e

a名古屋大学高等研究院・日本学術振興会特別研究員PD
b日本女子大学理学部物質生物科学科・日本女子大学バイオイメージングセンター
c学習院大学理学部化学科生命分子科学研究所
d認定特定非営利活動法人綜合画像研究支援
e日本女子大学名誉教授

要旨:アクチン細胞骨格は,細胞の極性成長や細胞質分裂などの生命活動の基盤として重要である.分裂酵母は,アクチン細胞骨格の形成機構や役割を研究するための優れたモデル系である.分裂酵母のアクチン細胞骨格は,主に蛍光顕微鏡によって解析されており,パッチ,ケーブル,リングの3種の構造として観察されるが,その微細構造はほとんど可視化されていなかった.最近,我々は加圧凍結固定法および免疫電子顕微鏡法によって,3種のF-アクチン構造の微細形態を明らかにした.さらに,分裂酵母細胞のアクチン細胞骨格を構成するF-アクチンの方向性を初めて明らかにした.これらの解析から,アクチン細胞骨格に関する基本的な情報や,アクチン細胞骨格の機能を解明するための一助となる知見が得られた.

キーワード:アクチン細胞骨格,加圧凍結固定法,ミオシンS1修飾,分裂酵母,電子顕微鏡

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