顕微鏡 第46巻▶第1号 2011
■特集:触媒化学への(S)TEM技術の応用

担持貴金属触媒における貴金属―担体間相互作用の透過型電子顕微鏡による観察

神内直人,松井敏明,江口浩一

京都大学大学院工学研究科物質エネルギー化学専攻

要旨:SnO2粉末にPt硝酸溶液を含浸することでPt/SnO2触媒を調製し,様々な条件で前処理を施した.このPt/SnO2触媒を用いて酢酸エチルの燃焼反応を行った結果,水素還元処理によって触媒活性は著しく低下し,再酸化処理により触媒の再活性化が起こることが確認された.この触媒性能の変化は貴金属と金属酸化物担体の間に働く相互作用に起因すると考え,貴金属―担体間の接合界面を透過型電子顕微鏡により観察した.還元処理を行った触媒ではcore-shell構造をした粒子が観察され,再酸化処理によって貴金属粒子の再分散化が起こることが明らかとなり,触媒活性と前処理による微細構造変化は強く相関していることが示された.以上のような前処理による触媒の構造変化は,貴金属としてRuやPd,Rhを用いた場合にも起こることが確認された.

キーワード:金属酸化物担持貴金属触媒,相互作用,燃焼触媒,Pt/SnO2,透過型電子顕微鏡

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