顕微鏡 第46巻▶第2号 2011
■がん幹細胞の動態とその制御

骨髄由来間葉系幹細胞によるがん幹細胞性再獲得機構

仙波秀峰

神戸大学大学院医学研究科病理学講座病理学分野

要旨:近年,がん微小環境を構成する液性因子や各種細胞の中でも,骨髄由来間葉系幹細胞(bone marrow-derived mesenchymal stem cell[BM-MSC])が関心を集めている.胃癌細胞株MKN-7とヒトBM-MSCをin vitroで共培養させることにより,両者のはがん幹細胞マーカーCD133陽性MKN-7細胞の割合を増加させたが,これはMKN-7細胞がWNT5A及びTGF-βの刺激の影響を受けたことによる.事実,ヒトスキルス型胃癌組織には,BM-MSCマーカーCD271陽性を示す間質細胞が観察され,胃癌細胞は高いWNT5A発現とTGF-β受容体発現を伴っていた.以上より,BM-MSCはがん幹細胞性再獲得に有利な微小環境を提供している可能性が考えられた.がん幹細胞性維持機構の解明には,がん微小環境構成因子であるBM-MSCの機能を理解することが不可欠である.

キーワード:骨髄由来間葉系幹細胞,がん幹細胞,cancer-associated fibroblast(CAF),WNT5A,TGF-β

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