顕微鏡 第46巻▶第2号 2011
■講座

近軸軌道計算法の非近軸軌道への拡張
―電子銃特性解析ソフトG-optkの開発―

藤田真a,b

a(株)島津製作所・分析計測事業部技術部
b名城大学・総合研究所

要旨:近軸軌道計算法を拡張し陰極から光軸と大きな初期角度を持って出射される電子銃内軌道の解析を可能とした.一般化を可能にしたキーポイントは軌道傾斜の指定にtanに代わってsinを用いた点にある.このことで実際軌道により近い近軸軌道の割り当てが実現された.新しい軌道パラメータにより陰極面での軌道初期条件(軌道変位と傾斜)とクロスオーバ面での軌道条件を多項式による写像で精度よく関係づけられる.多項式係数は電子銃特性の把握に有用な“光学パラメータ”として活用できる.このうち“電子銃焦点距離”は特に重要で,クロスオーバ径や電流角密度の評価に応用できる.一般化近軸軌道計算法に基づき電子銃特性解析ソフトG-optkを開発した.プログラムは軸上電位・磁束密度分布から近軸基本軌道および種々の光学パラメータの計算を行う.電子銃の物理的イメージをこれまでになく明快かつ迅速に把握するためのツールとして活用できる.

キーワード:軌道計算,数値シミュレーション,陰極レンズ,電子銃

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