顕微鏡 第46巻▶第4号 2011
■解説

結合組織除去法による血管中膜の走査電子顕微鏡的観察

藤原隆

愛媛大学総合科学研究支援センター生物資源分野

要旨:動脈から微小血管を経て静脈に至るまで,結合組織を除去した血管の中膜の三次元細胞構築を走査電子顕微鏡により観察した.乳腺の微小血管は,脂肪細胞の脱落の結果,細動脈から細静脈まで辿ることができ,紡錘形平滑筋細胞や分枝平滑筋細胞,長い周皮細胞やクモ型周皮細胞等を観察し,微小血管各節の立体構造を解明した.また,動静脈吻合の平滑筋細胞や上皮様細胞の形も解明した.この他,様々な血管の平滑筋細胞を観察した.腸間膜動脈では,鎌形を呈し,輪状に配列していた.胸大動脈の最外層では密な筋束となり網状構造を形成し,内側の層では粗に並んでシート状構造を形成していた.静脈では径方向に扁平で形,配列ともに不規則であった.冠状動脈でもいずれも不規則であった.クモ膜下腔の細動脈では星状平滑筋細胞が観察された.遺伝子組換えマウス等では,周皮細胞等を欠いた血管も観察できた.本研究は走査電顕が血管研究に有用であることを示唆した.

キーワード:周皮細胞,血管平滑筋細胞,微小血管,動脈,走査電子顕微鏡

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