顕微鏡 第47巻▶第2号 2012
■講座

生体分子の電子顕微鏡法による3次元再構成法

安永卓生,我妻竜三

九州工業大学情報工学部,JST・CREST/JST・SENTAN

要旨:生命は,タンパク質,核酸,脂質といった巨大な分子を主成分とし,それらが集積した細胞を単位として成り立つ有機体である.それらは,互いに会合したり,代謝物などの比較的小さい分子と結合したりすることで,生命の物理的,あるいは,化学的反応を引きおこし,生命活動を成立させている.その大きさは,数ナノメータ~マイクロメータ程度であり,通常の光学顕微鏡の分解能限界を超える.一方で,電子顕微鏡により撮影した場合,その情報は2次元の投影像である.実際には,たとえ,超薄切片でも,その切片の中には,タンパク質の大きさからみれば充分に大きい,数十ナノメートルの空間が存在する.投影像は,3次元の奥行き方向の情報をもつ画像であり,その奥行き情報を生かす方法が3次元電子顕微鏡法(3次元再構成法)である.ここでは,透過型電子顕微鏡像からの3次元再構成法を中心に,電子顕微鏡画像の3次元構造解析手法の原理とその留意点を述べる.

キーワード:電子顕微鏡,3次元再構成法,電子線トモグラフィー法,単粒子解析法,投影像

本文PDF