顕微鏡 第47巻▶第4号 2012
■講座

歯周病の再生治療材料:ヒト自家骨膜シートの特性

川瀬知之,奥田一博,吉江弘正

新潟大学大学院医歯学総合研究科歯科基礎移植・再生学分野
新潟大学大学院医歯学総合研究科歯周診断・再建学分野

要旨:われわれが実施している自家培養骨膜シートをもちいた歯周再生治療は,健康な歯槽骨から採取した骨膜片をシート状になるまで培養し,骨欠損のある部位に移植する治療法である.作製された骨膜シートは,豊富な細胞外基質と重層化した細胞集団が効果的に統合した人工的な組織である.骨原性誘導によって,そこに含まれる細胞のアルカリホスファターゼ活性が大きく亢進し,石灰化物沈着も促進する.これは骨芽細胞系の未分化な細胞が数多く含まれていることを示唆するが,組織特異性幹細胞が含まれる可能性も考えられる.「生きたDDS(Drug Delivery System)」として骨代謝に関与する増殖因子を徐放することと考え合わせると,十分に自家骨の代替となりうるものとして位置付けられる.培養期間の短縮化が最大の課題であるが,培養法の改良やスキャホールドとの複合化などにより解決の方向性が見えてきた.また,同時に検討している高機能化の実現によって,中規模骨欠損にも対応できる移植物への発展性も期待される.

キーワード:歯周再生治療,培養骨膜シート,スキャホールド,増殖因子,未分化間葉系細胞

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