顕微鏡 第48巻▶第1号 2013
■講座

電子顕微鏡観察で可視化される結核菌の素顔

山田博之

公益財団法人結核予防会結核研究所抗酸菌部

要旨:結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は,かつて世界で最も高い死亡率を記録した感染症である結核の原因菌である.1882年,Robert Kochにより発見された.幅約0.5 μm,長さ約3 μmのやや湾曲した普通の桿菌であるが,結核菌を含む抗酸菌属の細菌はcarbol fuchsin(石炭酸フクシン)やauramine Oを用いる染色で,塩酸アルコールによる脱色に耐える「抗酸性(acid-fastness)」を示す.また,結核菌のコロニーはコード形成と呼ばれる特異的な形態を呈し,感染宿主細胞内ではphagosome-lysosome fusion(P-L fusion)を阻害して殺菌プロセスから逃れるなど極めて特徴的な性質を示すが,その発現機序は未だ不明な部分が多い.本講座では結核菌が示すこれらの形態学的な特徴を電子顕微鏡観察を用いて検討した結果を紹介する.

キーワード:病原性細菌,結核菌,抗酸性,コード形成,phagosome-lysosome fusion

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