顕微鏡 第50巻▶第2号 2015
■解説

二光子蛍光寿命イメージング顕微鏡法によるシグナル分子活性計測

村越秀治

自然科学研究機構 生理学研究所,脳機能計測・支援センター

要旨:近年,2光子励起蛍光顕微鏡が普及したことにより,脳組織深部においてもシナプス等の微小構造を高解像度で観察することが可能になった.しかしながら,スパイン内部で起こるシグナル伝達については,タンパク質活性やタンパク質間相互作用を直接観察する方法がなかったため,殆ど明らかにされてこなかった.しかし最近,2光子蛍光寿命イメージング顕微鏡法(2pFLIM)を用いた蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の計測の技術進歩により,スパインや樹状突起内部で起こる様々な生化学反応を画像化し観察することが可能になりつつある.我々はこの方法を用いて,海馬組織中のスパイン内で低分子量Gタンパク質Rho GTPaseの活性化を可視化することに成功した.本稿では2光子蛍光寿命イメージングの原理とシグナル分子活性定量の方法,及び,この方法を用いた海馬スライス神経細胞シナプス内でのCdc42とRhoAの活性化イメージングについて紹介したい.

キーワード:2光子顕微鏡,蛍光寿命イメージング,低分子量Gタンパク質

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