顕微鏡 第51巻▶第3号 2016
■解説

グルタミン酸受容体GluD2と小脳シナプス回路の発達・維持・再生

渡辺雅彦

北海道大学大学院医学研究科解剖学講座

要旨:小脳は,様々な知覚と運動機能の統合を行っているが,情報処理のための神経回路は基本的に同一である.我々は,小脳の回路形成・維持・再生におけるグルタミン酸受容体GluD2(GluRδ2)の働きについて,遺伝子欠損マウスを用いて主に形態学的な研究を行ってきた.ここからわかってきたのは,GluD2は,プルキンエ細胞と様々な神経線維の間の接着を強化するということである.さらに平行線維シナプスの接着強化は,代謝型のグルタミン酸受容体mGluR1を活性化することで,生後早期における細胞体からの余剰な登上線維シナプスを除去し,近位樹状突起からの平行線維シナプスを除去する.したがって,GluD2により駆動される平行線維シナプスの構築とそれに伴って駆動されるmGluR1依存的なシナプス刈込みが,このニューロンの2つの回路特性を形作る.

キーワード:プルキンエ細胞,平行線維,登上線維,GluD2,mGluR1

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