顕微鏡 第52巻▶第2号 2017
■特集:超解像顕微鏡研究の最前線

生組織深部の超解像イメージングへ:光の乱れをアクティブに補正する補償光学

玉田洋介,早野裕,亀井保博,服部雅之a,b

自然科学研究機構 基礎生物学研究所
自然科学研究機構 国立天文台

要旨:超解像イメージングは,光の理論限界を超えた分子スケールの空間分解能で細胞の蛍光観察を行う技術であり,今後の分子生物学研究に必須となってくることが予想される.しかし,生きた細胞や組織の深部で起きる生命現象を観察する場合,超解像性能がうまく発揮できないことが知られている.これは,イメージングに用いる光が,生細胞や組織を通過する際に複雑に乱れることに起因する.この光の乱れの問題を解決し,生細胞や組織の深部でも超解像イメージングを可能にすると期待されているのが,補償光学である.補償光学は天文学において発展した技術であり,地上望遠鏡を用いた天体観測の際に,大気揺らぎによる光の乱れを補正することで,高解像の天体観測を可能にしている.本稿では,補償光学の概要と,補償光学を生細胞や組織のイメージングに適用する研究について紹介するとともに,補償光学を用いた超解像イメージングへの発展について考察する.

キーワード:補償光学,光の乱れ,ライブセルイメージング,深部イメージング,超解像イメージング

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