ローレンツ顕微鏡法と小角電子回折
a大阪府立大学大学院工学研究科
b理化学研究所
要旨:小角電子回折とは,透過型電子顕微鏡を用いて数十m以上のカメラ長を得ることで,10–4~10–7 radの微小な偏向角の回折(偏向)スポットを観測する手法であり,結晶固体中の長周期構造の空間変調や磁化分布等を解析することができる.最近我々は,観察試料に制御された外部磁場を印加した状態で,Foucault法及び小角電子回折が可能な電子光学系を構築した.本電子光学系は,対物ミニレンズ電流を制御することで,照射系と結像系を独立に制御できる特徴をもつ.また,ナノからマイクロサイズまでの構造的微細構造(格子欠陥や双晶構造など)と磁気的微細構造に関する実空間情報を同一領域から得ることができ,多角的に結晶内部の磁気状態を解析することができる.本電子光学系をLa0.7Sr0.3MnO3の強磁性相の磁気ドメイン構造解析やM型ヘキサフェライトの磁気バブルの形成過程のその場観察に適用したので紹介する.
キーワード:Lorentz顕微鏡法,小角電子回折,磁区構造,その場観察