顕微鏡 第52巻▶第3号 2017
■解説

周波数変調原子間力顕微鏡による分子骨格の観察と操作

川井茂樹

国立研究開発法人 物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点

要旨:原子間力顕微鏡(AFM)は,走査型トンネル顕微鏡(STM)と同様に表面上の凹凸を原子レベルの分解能で撮像するのに用いられてきた.しかし,分子の観察ではその分解能がサブナノメートル程度に限られており,また像の取得の難しさのためにSTMと比較してあまり用いられていなかった.ところが,2009年に,AFMの探針先端を一酸化炭素などで終端することで,分子骨格を直接的に観察できるようになると,この超高分解能AFMを用いた分子観察に急速な進展がおこり,表面化学の分野において重要な観察ツールとなった.本稿では,探針を分子や希ガス原子などで修飾したAFMの基本原理を解説し,それを用いた近年の研究成果について紹介する.

キーワード:原子間力顕微鏡,分子,表面化学反応,探針修飾,超高分解能観察

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