顕微鏡 第53巻▶第1号 2018
■講座

電子銃・電子源(後篇)―真空技術と光学設計―

糟谷圭吾,藤田真

株式会社日立製作所
Shimadzu (Asia Pacific) Pte Ltd.

要旨:前篇の「電子源電子銃の物理的・電子光学的基礎」の内容を受け,本後篇では,電子銃で重要となる二つの設計技術について取り上げる.一つ目は真空技術である.まず,冷陰極電界放出電子銃を例に,その動作原理と真空との関係を説明する.次に,電子銃の真空を従来の10–8 Pa(超高真空)から10–10 Pa(極高真空)にすることで可能になった電流安定性の向上や,大電流放出などの効果を紹介する.二つ目は大プローブ電流を取り出すための光学設計技術.ポイント陰極電子銃のクロスオーバ径は小さく角電流密度が低いためその光学設計では“電子銃部収差”の考慮が必要である.“電子銃焦点距離”という光学パラメータを導入することで収差影響の定量的な評価が可能となり電子銃やレンズ動作条件の最適化が図れることを示す.

キーワード:冷陰極電界放出(CFE)電子銃,極高真空,エミッタンス図,最適ビーム開き角