顕微鏡 第53巻▶第3号 2018
■特集:三次元:ソフトからハードへ(TEMの場合)

ナノ粒子の電子線トモグラフィーの進展

山本知一,重松晃次a,b,麻生浩平,松村晶a,b

九州大学大学院工学研究院エネルギー量子工学部門
九州大学超顕微解析研究センター

要旨:電子線トモグラフィーはナノメートルスケールでの高い空間分解能で物質の3次元立体構造を解析する手法として様々な研究分野で利用されている.投影像の傾斜シリーズから立体構造を再構築する演算処理方法の発展も著しく,最近では原子の3次元配列の再構築も行われるようになってきた.本稿では,金属ナノ粒子への電子線トモグラフィーの応用に焦点を絞って,まずその技術的な課題を示した上で最近の進展を紹介する.特に,試料傾斜角度範囲の制限に伴うmissing wedgeの問題に対するDART(Discrete Algebraic Reconstruction Technique)法と,原子分解能の電子線トモグラフィーの可能性を拓いたEST(Equally Sloped Tomography)法による解析例をそれぞれ紹介してそれらの有効性を述べる.

キーワード:電子線トモグラフィー,ナノ粒子,DART法,EST法,3次元原子配列