顕微鏡 第50巻▶第3号 2015
■解説

最新の走査電子顕微鏡が与える豊かな像情報
―鉄鋼材料の解析を例として―

佐藤馨

JFEスチール(株)スチール研究所

要旨:SEMが製品として発表されてから50年が経過した.電界放出型電子銃の搭載によりSEMは高い解像度を実現し,今日の普及をみた.また,入射電子の減速機構の採用により1 kV以下の低加速電圧での観察が一般化してきた.多くの材料では電子の試料中での侵入深さを抑えた低加速電圧の観察が有効である.SEMで高いレベルのデータが取得できるようになった一方で,同一試料を観察してもSEMの機種によって異なるコントラストが現れることが顕在化してきた.複数の二次電子検出器や反射電子検出器を搭載したSEMでは加速電圧や作動距離の違いによりコントラストが変化する.本解説では,鉄鋼材料の解析を例として最新のSEMが与える豊かな像情報について紹介すると共に.今再びSEMの開発初期の課題であった「信号検出」に関する課題について見直す.

キーワード:走査電子顕微鏡,二次電子像,反射電子像,コントラスト,信号のアクセプタンス