顕微鏡 第50巻▶第3号 2015
■講座

骨の細胞における組織学的・微細構造学的知見

網塚憲生,本郷裕美,坪井香奈子,長谷川智香,山本知真也,原口真衣

北海道大学歯学研究科硬組織発生生物学教室

要旨:骨組織に存在する骨芽細胞はコラーゲン分泌とリン酸カルシウム結晶の沈着を行うことで石灰化骨基質合成を行う細胞である.しかし,骨芽細胞は基質合成を行うとともに,自らは骨細胞に分化して骨基質の中に埋め込まれてゆく.骨芽細胞と骨細胞は互いに細胞突起を介した細胞性ネットワークを形成し,グループとして機能すると考えられている.破骨細胞は骨吸収を行う多核巨細胞であり,波状縁から酸と基質分解酵素を分泌して骨基質を吸収している.破骨細胞は古い骨あるいは脆弱な骨を認識して吸収すると考えられており,その後,骨芽細胞が新しい骨を添加させてゆく.このように,骨は絶えず,破骨細胞により吸収され,また,骨芽細胞により新しく形成されているが,この新旧の骨基質の置換を骨リモデリング(骨改造)という.骨リモデリングは,破骨細胞と骨芽細胞系細胞との細胞学的カップリングを基盤としている.

キーワード:骨芽細胞,骨細胞,破骨細胞,石灰化骨基質,骨改造