顕微鏡 第50巻▶第3号 2015
■最近の研究と技術

負の熱膨張材料ZrW2O8の微構造解析

佐藤幸生,山村泰久,幾原雄一

九州大学大学院工学研究院材料工学部門
筑波大学数理物質系
東京大学大学院工学系研究科総合研究機構

要旨:タングステン酸ジルコニウム(ZrW2O8)は通常の材料とは異なる負の熱膨張性を有しており,その体積収縮と結晶構造内のWO4四面体の配向状態には密接な関連があるとされている.本稿では,暗視野透過型電子顕微鏡法(TEM)および走査透過型電子顕微鏡法(STEM)を用いたWO4四面体の配向分布可視化について紹介する.秩序化したWO4四面体の〈111〉配向が180度反転している領域および〈111〉配向が無秩序化した領域の形成が明らかとなり,本材料の微構造ならびに添加元素効果が解明された.

キーワード:ZrW2O8,負の熱膨張,暗視野,TEM,電子回折