顕微鏡 第51巻▶第2号 2016
■講座

角度分解STEM-CL分光顕微法の原理と応用

山本直紀,斉藤光a,b

東京工業大学物質理工学院
九州大学大学院総合理工学研究院

要旨:ビーム径1nmの高い空間分解能と角度分解機能を備えた走査型透過電子顕微鏡(STEM)用カソードルミネッセンス(CL)システムの開発を行った.このシステムにより,放物面ミラーと位置制御可能なピンホールを組み合わせて試料からの放射を角度分解して測定することができ,さらに放射強度およびスペクトルの定量的測定が可能となる.これにより角度分解測定に関連した,(1)角度分解スペクトル(ARS)パターン,(2)ビーム走査スペクトル(BSS)像,(3)フォトンマップの3つの測定が可能になった.STEM-CLシステムを,プラズモニック構造における表面プラズモンポラリトン(SPP)の分散関係や定在波パターンの観察に適用した例を用いて,この手法の特徴について説明する.

キーワード:STEM-CL分光法,角度分解CL,表面プラズモン,プラズモニック結晶,遷移放射