Q&A誰か教えて!
走査プローブ顕微鏡関連
- 質問1
- STM,AFMの分解能は何で決まるのでしょうか?
- A1
- STM,AFMの面内分解能を決定する最大の要因は,「探針先端の原子スケールの形状」です。このことは,この種の顕微鏡が,指先でなぞる様に表面を描き出している事からも理解して頂けると思います。また,「トンネル電流,原子館相互作用力が,探針と試料間の距離によってどのように急峻に変化するか」ということも,試料面に対して垂直方向の分解能を左右します。当然ですが,急峻なほど,垂直感度が向上します。その他,振動,電気ノイズなどが分解能を劣化させます。探針(または試料)を走査することによって励振される顕微鏡の機械・機構部の振動も,高速走査になればなるほど問題となります。高速走査時には,トンネル電流・相互作用力を一定に保つためのフィードバック制御が追いつかなくなります。すると,探針の動きが試料表面を精確にトレースできなくなり,分解能を劣化させます。さらには,探針や試料表面上に動きやすい原子・分子が吸着していると,探針と試料各表面でのそれらの動きによって,トンネル電流・原子間力が変化し,ノイズとなります。もちろん,見たいものが原子・分子の動きなら,このノイズは信号であるとも解釈できます。(北陸先端科技大,富取正彦会員)
- 質問2
- 電流を流すと言うことは,エネルギーを試料に与えると言うことですが,それによっての影響(例えば,動的影響)は無視できるのでしょうか?
- A2
- 試料の特性や,電圧・電流値によって状況が異なると考えられます。トンネル過程自体は弾性的なものでエネルギーを失うことはないのですが,相手に突入した電子は表面またはバルク中(平均自由行程長によりますが)で運動エネルギーを失います。そのエネルギーは主に熱となります。印可電圧値・電流量が大きければ,当然発熱量も増え,温度が上昇します。程度を越えれば,針や試料表面がダメージを受けることもあります。また,電流密度が高いと,表面原子が運動量を取得して動き出したり,さらには,電子励起で結合が弱くなり,電界の影響と相まって表面原子が表面を拡散したり,表面から蒸発したりすることもあります。STMやAFMでは,このような変化がない条件を探して試料を観察するわけですが,逆にこの条件を上手く利用して,試料をナノスケールの精度で加工するSPM技術も注目を集めています。(北陸先端科技大,富取正彦会員)
このほか電顕大学の質問回答集には、いろいろな事例が紹介されています。興味がある方はこちらまで。