顕微鏡 第43巻▶第2号 2008
■線維芽細胞をめぐる最新の知見

組織常在性線維芽細胞は新生血管の内皮細胞に分化する

藤原隆a,昆和典b,樅木勝巳c,大沼俊名a

a愛媛大学総合科学研究支援センター生物資源分野
b愛媛県立大学保健科学部臨床検査学科
c岡山大学自然生命科学研究支援センター動物資源部門

要旨:血管新生は重要な生命現象であるが,その機序や新生血管の内皮細胞の由来については必ずしも明らかではない.我々は結合組織常在性線維芽細胞の血管内皮細胞への分化転換について検討した.ウサギ皮下組織の細胞を培養し,3H-チミジン等種々の方法で標識し,耳窓に自家移植したところ,新生血管内皮細胞に標識が観察された.しかし,皮下組織の培養細胞には血管内皮細胞の混入の可能性があり,また標識物が移動する可能性もあるので,遺伝子組換えマウスの角膜を移植に用いた.Flk1-lacZマウスの角膜基質の培養細胞を野生型の担癌マウスの尾静脈から移植,あるいはTie2-GFPマウスの角膜基質移植片を野生型マウスの角膜に移植したところ,新生血管にlacZあるいはGFPの発現が観察された.これらの結果から組織常在性線維芽細胞は新生血管の内側又は外側から血管内皮に入り込み,血管内皮細胞に分化転換することが明らかになった.

キーワード:血管新生,血管内皮細胞,線維芽細胞

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