顕微鏡 第43巻▶第3号 2008
■解説

ギャップ結合による神経細胞ネットワーク

福田孝一

a九州大学大学院医学研究院神経形態学分野

要旨:神経細胞の中で,通常の化学シナプスによる間接的な結合だけでなく,ギャップ結合による直接的な結合をも利用している例があることが近年注目されている.しかし方法論的な制約から,神経細胞におけるギャップ結合の研究は長くその存在の証明にとどまり,ネットワークとしての具体的な姿は不明なままであった.ごく最近の形態学・生理学・分子生物学研究は,神経細胞間ギャップ結合の解明に大きな進展をもたらしている.特に電子顕微鏡と共焦点レーザー顕微鏡を組み合わせた新しい方法によって,光学顕微鏡レベルでギャップ結合を確実に同定することが可能となり,ギャップ結合ネットワークの3次元構造を広い視野で解析することが実現した.ギャップ結合を介して大脳皮質GABAニューロンが形成するネットワークは,側方に密で連続的な結合を形成し,脳における情報表現の機序における重要性が示唆される.

キーワード:ギャップ結合,インターニューロン,コネキシン36,大脳皮質

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