顕微鏡 第43巻▶第4号 2008
■講座

STEM像の解釈(Ⅱ)

山崎貴司a,渡辺和人b

a東京理科大学理学部第一部物理学科
b東京都立産業技術高等専門学校

要旨:高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF STEM)像は電子線の干渉性や輝度,収束性および装置の安定性の向上によって高分解能電子顕微鏡(HRTEM)像と同等の空間分解能を得ている.近年,球面収差補正装置の登場によって収束性が飛躍的に向上したため,分解能はsub-ångstromに至った.しかしながら,定量的局所構造解析の手法としてHAADF STEM法を利用するには,白い点を原子柱の位置として像を解釈するだけでは不十分である.そこで,これからSTEMを使って研究される方を対象に,数式による記述を極力避け,STEM像を理解するために必要不可欠なポイントの説明を通して本稿を著すことにした.なお,今回の解説Ⅱでは主にbright-field STEM像と球面収差補正したSTEM像を中心に行う.

キーワード:走査透過型電子顕微鏡,明視野走査透過型電子顕微鏡,高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡,球面収差補正装置,局所構造解析

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