顕微鏡 第43巻▶第4号 2008
■最近の研究と技術

生体内分子イメージングでみる細胞動態と組織再構築

西村智

a東京大学循環器内科・ナノテク人材育成ユニット特任助教・科学技術振興機構さきがけ「光の利用と物質材料・生命機能」研究員

要旨:メタボリックシンドロームの病態形成には,慢性炎症に伴う脂肪組織の再構築(リモデリング)とそれに伴う機能異常が重要である.我々は生体内分子イメージング手法を新たに開発し,脂肪組織に応用し,肥満脂肪組織では,脂肪細胞分化・血管新生が空間的に共存して生ずることを示した.また,生体内観察を用いて,肥満した脂肪組織では慢性炎症を基盤として微小循環において異常な血管内皮・白血球・血小板の相互作用が生じている事を明らかにした.すなわち,肥満脂肪組織が慢性炎症の場であることをはじめて可視化し生体内で証明した.生体内分子イメージングを用いた細胞動態・組織再構築の検討は,今後の研究展開において必須と考えられた.

キーワード:生体イメージング,炎症,肥満,脂肪組織

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