顕微鏡 第44巻▶第1号 2009
■解説

X線回折顕微法

西野吉則

a独立行政法人理化学研究所 播磨研究所 放射光科学総合研究センター

要旨:X線回折顕微法は,コヒーレントX線回折パターンから試料像を再構成する斬新な手法である.像再構成には計算機上での反復的位相回復法が用いられる.レンズを必要とせず,従来のX線顕微鏡の限界を超える高い空間分解能が達成できる.X線の高い透過能を利用した,厚い試料の内部構造の非破壊測定に特に有効である.理想的なX線位相コントラスト顕微法であり,無染色の細胞小器官など,X線に対して透明な物体に対しても高いコントラストが得られる.さらに,ナノ結晶試料のブラック反射近傍でのコヒーレントX線回折からは,歪み分布を得ることもできる.最先端のアンジュレーター放射光を利用した研究が世界的な広がりを見せている.また,次世代のX線源であるX線自由電子レーザーを利用した研究への期待も高まっている.本稿では,X線回折顕微法の原理および研究の動向について解説する.また,電子回折顕微法の研究の動向についても触れる.

キーワード:X線回折顕微法,コヒーレントX線,オーバーサンプリング,反復的位相回復法

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