顕微鏡 第44巻▶第1号 2009
■講座

ローレンツ顕微鏡

進藤大輔,赤瀬善太郎

a東北大学多元物質科学研究所

要旨:磁性体の磁区観察に用いられるローレンツ顕微鏡の原理とその応用について記した.まず,試料の磁区構造に影響を与えない小さな磁場で観察を行う対物レンズ(ローレンツレンズと呼ばれる)の機構について説明した.次に,ローレンツ顕微鏡法と呼ばれる磁区観察法について解説した.汎用のディフォーカス法の他インフォーカス法を説明するとともに,強度輸送方程式を用いた位相計測法と走査ローレンツ顕微鏡法についても概説した.さらに,磁性材料の特性を理解する上で重要な磁化過程を明らかにするための各種磁場印加システムについても紹介した.永久磁石を用いた磁性針をピエゾ駆動ホルダに装着することにより,局在した強い磁場を試料に印加でき,永久磁石の逆磁区発生過程を追跡できることを示した.また,開発中の磁場印加と偏向システムを同期させた交流磁場印加システムの説明を行い,電磁鋼板中の析出物と磁壁の相互作用についての観察結果も紹介した.

キーワード:ローレンツ顕微鏡,ローレンツレンズ,磁場印加システム,磁壁,磁化過程

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