顕微鏡 第44巻▶第2号 2009
■特集:生体高分子の高分解能構造解析

電子線結晶構造解析から導かれたギャップ結合チャネルのプラグゲーティング機構

大嶋篤典

京都大学大学院理学研究科生物科学専攻生物物理学教室

要旨:多細胞生物において細胞間の物質透過を担うギャップ結合は隣接細胞の細胞質を直接連絡するコミュニケーションチャネルである.ギャップ結合のゲーティング機構に関しては以前から複数存在することが指摘されていたが,それらの構造学的知見は少なかった.本稿ではコネキシン26(Cx26)が作るギャップ結合の二次元結晶から電子線結晶学によって計算した三次元構造と投影像の構造解析を紹介する.Cx26M34A変異体の三次元構造はチャネルの孔の中に直径約20Åの密度が確認され,これがプラグとして通路を塞ぐことでチャネルの閉じた状態を作り出すことを強く示唆するものであった.一方,N末端を切断したCx26M34Adel2-7の投影像ではプラグに相当する密度の有意な低下を確認した.これらの構造解析からコネキシンのN末端がチャネルの孔の中で物理的に閉じることによってチャネルを開閉するプラグゲーティング機構を提案する.

キーワード:ギャップ結合,電子線結晶学,極低温電子顕微鏡,三次元構造解析,ゲーティング機構

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