顕微鏡 第44巻▶第2号 2009
■特集:生体高分子の高分解能構造解析

単粒子像解析法によって明らかにされた最小の生体分子構造体

加藤貴之a,Russell P. Goodmanb,Christoph M. Erbenb,Andrew P. Turberfieldb,難波啓一a

a大阪大学大学院・生命機能研究科
bオックスフォード大学物理学研究室

要旨:凍結氷包埋試料の低温電子顕微鏡を用いた単粒子像解析法は,生体超分子複合体など巨大な分子集合体の構造解析にその真価を発揮する.その反面,分子量100 kDa以下の小さな分子では,S/Nの悪い写真に粒子像が埋もれてしまうため,解析は不可能であると言われてきた.我々は,分子量約78 kDaの正四面体DNAナノ構造体の立体構造を単粒子像解析法を用いて解析した.さまざまな画像処理法を組み合わせて活用することで,DNAの二重らせん構造を解像し,設計上予想された2種類の立体異性体を区別するのに十分な,12Å分解能の構造解析に成功した.

キーワード:単粒子像解析法,正四面体DNAナノ構造,極低温電子顕微鏡,ナノテクノロジー

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