顕微鏡 第45巻▶第1号 2010
■特集:アジア若手の研究から

AlGaAsバッファ層を有するGaAs(001)基板上に成長させた立方晶GaNの構造相転移のTEMによる研究

Jamreonta Parinyataramasa, Sakuntam Sanorpima,b, Chanchana Thanachayanontc, Kentaro Onabed

aNanoscience and Technology, Graduate school, Chulalongkorn University
bDepartment of Physics, Faculty of Science, Chulalongkorn University
cNational Metal and Materials Technology Center
dDepartment of Advanced Materials Science, The University of Tokyo

要旨:AlGaAsバッファ層を使ったGaAs(001)基板上の有機金属気相エピタキシャル成長による立方晶GaN膜における構造相転移を透過電子顕微鏡法(TEM)で調べた.立方晶GaN層のナノスケールでの構造相転移に対するAlGaAsバッファ層の役割に焦点をおいた.挿入されたバッファ層は高成長温度(900°C以上)でGaAs基板が熱分解することを防ぐ保護層として振る舞うことがわかった.このことによってGaN/AlGaAs界面での孔(voids)が生成することなくGaAs基板上にGaN層を成長させることができる.他方,立方晶GaN/GaAs/AlGaAs/GaAs(001)基板多層構造では孔の生成が観察されたが,これらの孔はAlGaAsバッファ層界面で留まることがわかった.しかしながらこのAlGaAsバッファ層はGaN最上層内で立方晶から六方晶への相転移を誘起することが明らかになった.この立方晶から立方晶/六方晶混晶へのナノ構造相転移の存在と立方晶GaN層内でのエピタキシャル方位関係をTEM観察によって解析した.これらの結果は,フォトルミネッセンス,ラマン散乱測定によって確認された.

キーワード:立方晶GaN,六方構造,透過電子顕微鏡,構造相転移

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