顕微鏡 第45巻▶第2号 2010
■講座

電子線クライオトモグラフィー単粒子解析によるT7様ウイルスのシアノバクテリアへの感染過程の解析

村田和義,Qinfen Zhang,Xiangan Liu,Michael Schmid,Wah Chiu

生理学研究所
Baylor College of Medicine

要旨:電子線クライオトモグラフィー単粒子解析は,多様な構造変化をもつ同一粒子が互いに混ざり合ったような生体分子試料において,これを区別して解析することができる.我々は,この方法を使ってT7様ウイルスP-SSP7の海洋シアノバクテリアProchrolococcus MED4への感染過程を構造学的に調べた.その結果,P-SSP7の細胞への吸着には大きく分けて3つのパターンがあり,この過程を通してテール周囲にあるスパイクファイバーの構造が変化し,最後にテールを細胞表面に垂直に結合させてウイルスDNAを細胞内に注入することがわかった.さらに,これを高分解能の単粒子解析の結果と比較することによって,DNA放出とスパイクファイバーの構造変化との関係を明らかにすることができた.本稿では,この解析手法を中心に解説し,あわせて得られた結果を紹介する.

キーワード:単粒子解析,クライオ電子顕微鏡,トモグラフィー,ウイルス,シアノバクテリア

本文PDF