顕微鏡 第45巻▶第2号 2010
■講座

収差補正電子光学

岡山重夫

産業技術総合研究所エレクトロニクス研究部門

要旨:回転(軸)対称な形状をもつ電子レンズの球面収差,色収差は,1947年にScherzerによって軸非対称な光学系の導入によって理論的に補正できることが提示されたが,軸非対称レンズを多段に組み合わせるため,厳しいアライメント精度の問題をクリアできず,高度に低収差化が図られた電子顕微鏡に実装できるレベルには至らなかった.しかし,1990年代に入り,双極子,四極子,六極子,八極子の調整が可能な十二極子を利用したPC制御による調整技術,材料・加工技術等の進展に伴い,収差補正技術の実用化研究が加速した.特に,球面収差を補正する六極子補正器を搭載した200kV電子顕微鏡の開発が収差補正の実用化を加速した.本報告では,多極子構造レンズによる収差補正技術について概説する.

キーワード:収差補正,四極子,六極子,八極子,十二極子

本文PDF